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ゆっくりのんびり大きくなあれ

ゆっくりのんびり大きくなあれ

その5

先生が再び登場。
グリーンシートも再セット。
とうとう来た!なんて考える余裕もない。
もうグッタリ。
いきむ間も、夢の中にいるみたいだった。
夢にしては痛い、でも視界は歪んで見える。。
そして陣痛が遠のくと、意識も遠のく…。

午前5時半頃(らしい)、
「赤ちゃんが通りやすくするために、麻酔してちょっと切るからね」
と言われた。
これもまた、バースプランでは『切らなくて良いならなるべく切りたくない』と書いていたが…。
「はい!(切ってください!)」
と即答。。

麻酔がチクッとして、その後ハサミで「バチッ!」と会陰の切れる音がした。
痛みは全くなし。

いきむ度、先生と看護士さんが必死で励ましてくれた。
「もう髪の毛見えてるよ」
「もうすぐそこまできているよ」
「頑張って、あとちょっとよ!!」
などなど。

そのわりに、何度いきんでも出てこないんですけど…。

陣痛の合間で目を瞑っている私に先生が
「今度は私がお腹を押すから、負けないでしっかり最後までいきんでね。最後に赤ちゃんを出すのは私じゃなくてあなたなんだからね!!」
と言った。
これが最後のいきみ…??
考える頭もない。

陣痛が来た。
「いきみます…」

大きく二呼吸。
『ん~~~!!』

いきんでいる間に、先生が半ば馬乗りになってお腹を数度押す。
そんなに強く押されるなんて思ってなかった。
負けずに長く、強くいきむ。

「ん~!」っていういきみが、先生にぼんぼん押されて
『ん! ん! ん! ん! ん!』となった。
(↑いきみの間は声を出してはいけないので声にはなってないけど
 自分で自分がちょっとおかしくて笑えた)

先生が押すのをやめた。
「はい、頑張って!!!」
もう必死。
陣痛の痙攣も手伝ってつよくいきんだ。

「はい、頭が出たよ。今度は力を抜いて短く息して」
頭が出た感触なんて全くなかった。
何がなんだかわからない。
でも言われたとおり、短く息をして必死で力を抜いた。

何か大きなものがツルッと出た感覚。
ちょっとして、赤ちゃんの大きな泣き声。

意識が朦朧としているので感動もあまりない。
どちらかと言うと、『産まれたの?本当??』と半信半疑だった。
ここまでの道のりが長かったぶん、出るのがこんなに一瞬だというのが信じられない。
混乱した頭で、泣き声だけでも必死で頭に焼付けようとした。
(でももう覚えてない)


…それからもう記憶になかったけど、パパが看護士さんに言われてビデオをセット。
(後日ビデオを見て思い出した)
臍の緒をカットして軽く拭いた赤ちゃんを、私のお腹の上にグリーンシートを敷いて乗せてくれた。

先生が一言「重いな~」と言った。
赤ちゃんがお腹に乗ったとき、ずしっときた。
赤紫色の赤ちゃんは手を大きく開いて元気な声で泣いていた。

「おめでとう~!!」
看護士さんからそんな言葉を聞いた気がする。

お腹の上に乗せてくれたのはほんのちょっとの時間。
それから赤ちゃんは鼻から羊水を出したり、体重をはかったりするのに連れて行かれた。
連れて行かれる間際、赤ちゃんがシートの上におしっこをした。
『あー、元気な赤ちゃんだ…』と思った。


後産は軽い陣痛が来て胎盤が出てくると本にはあったけど、陣痛なんて知らない。
全く痛くないのに胎盤が出てきた。

他人の出産シーンでは、テレビのドラマなんかでも涙が出た。
でも私も、最後にはそばにただ呆然とついていたパパも、別に感動の涙なんてなかった。

ただぼんやり、生まれてきたばかりの赤ちゃんをを眺めるばかり。
どんな顔をしてるか、指はちゃんと5本あるか、どこか異常はないか。
ぼーっとした意識の中、必死で見た。

切開の縫合。
チクチク縫う感触がモロにわかって、しかも痛かった。
「いたっ!」
って一針一針小さく叫んでいたので麻酔を追加。
ここで痛いなんて思いもしてなかった。
しかも結構たくさん縫うものらしい。

先生に「まだ縫うんですか?」と2回も聞いた。



縫合の後、カンガルーケア。
赤ちゃんがお腹に再び連れて来られた。
しわしわ、くちゃくちゃのあったかい赤ちゃん。

ずっと抱っこしてみたかった。
ずっと顔を見てみたかった。
ずっと手を触ってみたかった。

夢が弾けた瞬間。
逢いたかった『たんぽぽ』(←ほのかの胎児ネーム)に逢えた瞬間。


想像してたより重たかった。
想像してたより美人だと思った。
(↑福笑いのような顔だったらどうしよかと思っていた)
想像していたよりあったかくて、
想像していたぬいぐるみのようなふわふわじゃなくて、ちゃんと芯の硬い、小さいけど人間の形をしていた。



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